it's you who knows

じぶんらしく

こてつアキューズ

『あ、拓先輩。ちーすでーす。』


神出鬼没。図らずともしばしばニアミスしてしまう。そんな知人、友人がみなさんにはいるだろうか...?


1ヶ月ほど前、友人からある1人の男の子を紹介された。彼の名前は戸哲(こてつ)君。"こてつ"そのものなら聞いたことのない名前ではないけれど、戸哲となるとそんな名前は俺は寡聞にして聞いたことがない。失礼ながらとんだネーミングセンスの親だと思った。


戸哲君は一つ下の21歳。言葉遣いが大変お良ろしいニューフェイスだ。暫く新しい人と出会うことなどなかったので俺は軽く緊張してしまっタ。おまけにちょっとイケメンだ。食べちゃいたい...。とはさすがに初対面で言うほどお花畑なオツムではないので全力でポーカーフェイスを出力した。


話してみると程よいフランク加減で話しやすい。久しぶりだなこんな人。なんて思った。たまに毒を吐くところもなんだかんだ好き。もちろんloveではなくlikeである。


そもそも当時、僕には片恋相手がいたので他の人間にloveの意味での好意を抱くことはなかった。そう、俺には片想いの相手がいたのだ。いた。there were...。were。過去形である。


もしかしたら今でもその想いは生きているのかもしれないけれど、そんな想いを相手に打ち明けようとした直前。俺は取りつく島もなく拒絶された。


だがそれはなにも他人が知る必要のあることではない。他人に話す必要もないこと。俺の胸一つにしまっておけば良いことだったのたが。誰かに話してラクになりたかったのか俺はつい戸哲君に自分の玉砕話を語ってしまった。


『それは無粋なことをしましたね。拓先輩。』

そんなことを戸哲君に言われてしまった。しょぼんである(´•ω•`)。ただ、多くの人がワケもなく同情する中、彼だけがそう言った。そんな彼の実直とも言える発言に、媚を売らないその態度に俺は惹かれた。


それから戸哲君は攻めに責めてきた。これでもかというくらいに顔を近づけながら『拓先輩は相手の好みじゃないんでしょ?』『誰がニート(仮)と付き合いたいと思うんですか?』『歳も違いすぎますよ。』『不詳拓先輩がどうして殊勝◯◯さんと付き合えるんですか?』『勘違いも甚だしいですよ。』


しょぼんである(´•ω•)他にも色々言われたの。

だがごもっともでございます(笑)


少し気分が悪くもなったが、ハッキリ言ってもらえたことで逆に気も晴れた。恋は盲目なんて言うけれど、全くその通りである。戸哲君は俺に目薬をさしてくれた。会って早々俺の心を打つとは期待のニューフェイスである。


などと思っていたら、戸哲君は仕事があるからと簡単に挨拶を済まして帰ってしまった。流れのまにまに独りになってしまった。せめて連絡先くらい交換させてくれよ!(普通の友達としてな!)


連絡先すら知らずに別れた戸哲君だったが、俺はその後も度々彼に会うことになる。本当に不思議なものだ。そう、それは本当に神出鬼没という言葉が似合うほどに。